建設業許可を受けると、それまで請け負うことができなかった500万円以上の工事(建築一式の場合1,500万円以上の工事)を受注できるようになりますが、それまでは負うことのなかったいくつかの義務等が生じることになります。
決算変更届は許可業者が負う義務のひとつ
そのうちまず注意が必要なのは、毎年提出しなければならない事業年度終了後の「決算変更届」(決算報告、年次報告)※です。
(※名称は都道府県によって微妙に異なります。)
決算の報告書
東京都の場合、名称が「決算変更届」であることから、決算したものの後日に変更事由が生じた場合のみ提出する特殊な書類のようなイメージで捉えられることも多いのですが、実際は決算内容や1期分の工事経歴等を建設業法で定めた基準でまとめて提出する報告書のことです。
事業年度が終了すると税務署への申告があることは皆さんがご存じですが、建設業許可業者さんの場合は、この税務的な申告が終わった後、その情報を含めて行政庁へも一事業年度の報告書として届出をしなければならないわけです。
事業年度終了後4か月以内が提出期間
この決算変更届の提出期限は、事業年度終了から4か月となっています。
会社・法人形態で建設業を営んでいる場合、事業年度終了から2、3か月後のあたりで税務署へ決算申告を行なうことが通常の流れだと思います。ということは、その決算申告に使用した決算書の内容を元に作成する決算変更届は、税務署への決算申告に費やした日数は省いた残りの日数が実質の作成・提出期間ということになります。
従って、4か月あるといっても前半の2,3か月は税務申告に費やされることが多いはずですから、建設業者としての決算変更届にかけられる日数は、約1か月から多くて2か月程度しか実質的にはありません。
決算変更届けが未提出の場合は?
- 「日々の業務が忙しく、決算変更届の提出を忘れてしまった!」
- 「5年に1度の許可の更新は注意していたが、決算変更届は存在すら知らなかった…」
本来は毎年の提出が義務付けられているためまずいのですが、許可業者さんの中には、業務に追われているうちについ決算変更届の提出を忘れていたという方も意外と多いようです。
更新手続きや業種追加手続きが行えなくなる
直接の罰則規定は、建設業法第50条に懲役刑や罰金刑などが科されているものですが、この罰則規定よりも、
- 許可の更新が受け付けてもらえない
- 業種追加の申請も受け付けてもらえない
などの行政手続きの拒絶が、建設業者さんにまず直接的なデメリットとして生じます。業種追加などは、取引先から大型案件を受注するために短期間で手続きを完了することが求められることが多いのですが、その際に決算変更届を何年も提出していなかった場合、まずはその資料集めなどから始めなければならず、余計な手間や日数がかかってしまいがちです。
取引先への信用悪化や自社の業績証明ができない
また間接的なデメリットとしては、毎年忘れずに決算変更届を行政庁に提出している業者さんであれば、取引先がその業務状況を確認するために行政庁での閲覧請求によって一定の情報を閲覧することが可能です。ところが、もし決算変更届を何年も怠っていると、行政庁でこのような業務状況の確認が取れず、管理がしっかりしていない業者という印象を抱かれないとも限りません。
さらに、決算変更届さえ毎年提出していれば、それだけでも取り扱い業種を間違いなく行っていたという確認資料にはなります(都道府県により程度は異なりますが)。たとえば後日、なんらかの問題に対処するため特定業種の業績を証明することを求められた場合、もし決算変更届を提出していないとなると、行政庁に情報が何も残っていないことになりますから、この証明は他の資料に頼らざるを得ず面倒になる可能性も高まります。
決算変更届に必要な書類一覧
決算変更届で通常必要となる書類は、主に以下のようなものがあります(東京都の法人の場合)
変更届出書 | |
工事経歴書 | |
直前3年の各事業年度の工事施工金額 | |
財務諸表 貸借対照表 | |
財務諸表 損益計算書・完成工事原価報告書 | |
財務諸表 株主資本等変動計算書 | |
財務諸表 注記表 | |
財務諸表 付属明細表 | |
事業報告書 | |
納税証明書 | |
※ | 使用人数 |
※ | 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表 |
※ | 定款 |
※印のついた書類は、変更があったときのみ提出するものです。
書類名の冒頭に財務諸表とあるものは、決算書をもとに建設業法に沿ったかたちで一部修正して作成する書類です。